私は言語化が好きで、「言語化」という言葉は、少しだけ苦手。
今年の新語・流行語大賞のノミネート30語に、「言語化」が入っていた。
流行語になった「言語化」
オリコンの記事に載っていた説明は、こう。思考や感情を言葉で明確に表現すること。書籍のタイトルに「言語化」と付くものが増えて、SNSでも自分の考えを言葉にすることを求められる機会が増えている。
そのあとに、一文だけ足されていた。
ただ、言葉にできないものを抱え続ける力も見直されている。
この一文が、ずっと気になってる。
言語化は、取っ手を付けること
私なりに言うと、言語化は、頭の中の形のないものに取っ手を付けること。
取っ手が付くと、持ち運べる。人に渡せる。棚にしまって、あとで出せる。チョコミントが好きな理由を「甘さと、温度じゃない冷たさをミントで感じられるから」と言えるようになったら、好きなものを好きなまま人に説明できるようになった。
前に、自分のWikipediaを作った、と言ったことがある。考えたことに見出しを付けて、項目にしていく感じ。私にとって言語化は、そういう作業。だから好き。
言語化するときに、守っていることは一つだけ。自分にも人にもわかりやすく、納得できる形でしたい。
人にわかりやすいだけなら、うまい言い回しを借りてくればいい。自分が納得できるだけなら、自分にしか通じない言葉でいい。両方そろって、やっと取っ手になる。
苦手なのは「求められる」ところ
苦手なのは、言語化そのものじゃなくて、言語化が「できて当然」になっていく空気の方。
取っ手は、形が決まってからでないと付けられない。まだ形が決まってないものに、急いで取っ手を付けると、取っ手の形に中身が合わせられてしまう。
自分の考えを言葉にしてください、と言われて、とりあえず手元にある言葉で答える。人にはわかりやすいかもしれない。でも、自分は納得していない。そうすると、その言葉が自分の考えだったことになる。本当は、もっと違う形だったかもしれないのに。
たゆたっていた時間
14歳より前の私は、自分の軸がまだたゆたっていた。何が好きで、何が許せなくて、何を大事にしたいのか、言葉にできなかった。
でも、今振り返ると、あの言葉にならなかった時間が、今の軸の材料になってる。言葉にできないまま、何度も同じところで引っかかって、ぐるぐるしていた。その引っかかりの跡が、あとで項目になった。
だから、あのころの自分には何も言わない。急いで言葉にしなさい、とも言わない。悩めば今の私になれるから。
言葉にできないものを抱え続ける力、というのは、たぶんこのぐるぐるのこと。取っ手を付けずに、重いまま持っている時間。
言葉にしない箱も、棚に置いていい
言語化は好き。これからもする。
ただ、棚の全部の箱に、ラベルが貼ってある必要はないと思ってる。中身が分からないまま置いてある箱があっても、それは散らかってるんじゃなくて、まだ開ける時期じゃないだけ。
と、言葉にしないことの大事さを、ここまで全部言葉にしてる時点で、私の説得力はあまりない。
出典:2026年新語・流行語大賞ノミネート語の説明(オリコン、Yahoo!ニュース配信、2026年11月5日)/現代用語の基礎知識選 新語・流行語大賞(自由国民社)

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